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「Zoom時代の在宅ワーク・学習のネットワーク環境とトラブルシューティング」

このページは、上記タイトルのセミナー ダイジェスト版です

※2021年3月 上記セミナのダイジェスト動画を再公開しました↓

 コロナ禍でリアルな集合型セミナーが開催できなくなり、この3月から、クラウドTV会議システムのZoomやCisco Webex Meetingsを用いたオンラインのセミナーを始めています。しかしながら、新人研修などで、数十名の受講者に対して講座を行うと、トラブルもよく発生します。これには、配信側が原因となるトラブルもありますが、受講者側の問題によるトラブルも数多くあります。トラブルの現象としましては、音声(音が 切れる・音が変)や動画(画像が乱れる、カクカク感が激しい)、画面共有が不安定など多くのパターンがあります。

 配信側のトラブル は、 配信側の システム環境やネットワーク環境の整備や運用の工夫で対応できます。しかしながら、受講者側の在宅ワーク環境におけるトラブルは、ネットワークやシステムの 環境 が、多種多様であり、 トラブルシューティング (原因の特定とその対応)が難しい面があります。

在宅ワーク・在宅学習には、さまざまなネットワーク環境がある

 一口で、在宅ワーク・学習と言っても、下図のように様々なインターネット接続方法があり、また、家庭内のネットワーク環境とその運用状況、さらには各個人の端末(パソコンやスマホ、タブレット端末など)のシステムも様々です。

在宅ワーク・在宅学習の様々なネットワーク環境

 4Gのモバイル通信網(LTEやWiMAX)を使って、スマホやタブレット端末、パソコンを直接接続する場合は、基地局からの電波が十分な強さであれば、トラブルは少ないかと考えられます。 (基地局や4Gのバックボーン回線が大きく混雑している場合や、障害が発生している場合は別ですが。) サービスエリア外や電波が極端に弱い場合は接続できませんが、ユーザ側では、電波の状態が良い場所に移動するなどしか改善する手段はありません。(少なくとも、サービスを購入しているので、通信事業者にクレームをつけて、改善してもらうことはできるかと思います。)

無線LAN(WiFi)ネット接続する場合の、よくあるトラブル

 難しいのが、家庭内のネットワーク環境に無線LANを使っている場合のトラブルです。特に、自宅までは高速な(はずの)光ブロードバンドサービスで接続していても、家庭内の無線LAN(WiFi)で帯域(使用できる回線速度)が落ちたり、回線が切れるなどのトラブルがよくあります。一口で無線LANと言っても、 使用している電波には、2.4GHz帯と5GHz帯の2種類があり、それそれ特徴あります。

無線LANの電波  2.4GHz帯と5GHz帯の特徴


 無線LAN(WiFi) は、パソコンなどの子機がアクセスポイント(無線LANの親機) から離れていたり、また1階から2階へなど階が違ったりする場合、子機が受信する電波が 弱く なり(アンテナのマークが弱) 、それが原因となり、ネットが遅い、切れるなどのトラブルがよく発生します。この場合は、子機の使用場所を変える運用や、アクセスポイント の増設、無線LANの中継器 の設置などの方法で対処できることが多いです。

 厄介なのは、 電波が強い(アンテナのマークが強)表示でのトラブルです。この場合は、アクセスポイント(親機)が使用している電波のチャネル( 周波数 )の混雑や、他の機器による電波の干渉によるトラブルです。アクセスポイントが使用している電波のチャネルが混雑すると、ひとりのユーザが使用できる帯域が減り、スループット(体感的な通信速度)の低下がおきます。酷い場合には回線が切れたりする場合もあります。また、アクセスポイントのチャネル設定が自動の場合や、自動的に混雑しているチャネルから、別のチャネルに移動する機能が有効な場合、使用しているチャネルが頻繁に変わって、切れたり繋がったりを繰り返す現象が発生する場合があります。そのような、電波の混雑によるトラブルは、使用している電波の可視化(見える化)を行い、空いているチャネルに移行する、または比較的空いている5GHz帯の無線LANに移行する必要があります。 無線LANの電波の可視化ツール(アプリ)には、パソコンで動作するものやスマホで動作するものがあます。

無線LANツールの画面の例(Windows用のアプリ inSSIDer

 上記の例では、2.4GHz帯の全体にわたって無線LANが使用しており、全体的に混雑している状態です。このような状態で、同じチャネルを使う無線LAN(自宅と他の無線LAN)を同時に使うと、双方の無線LANに遅くなるなどの影響が出ます。特に、大きいデータのダウンロードやオンラインの動画サービス(オンデマンド・ビデオ) などの再生を行うと、無線の混雑がはげしくなり、他方に大きな影響を与えやすくなります(なお同時に使わなければ、大きな影響は出ません)。この場合は、混雑している 2.4GHz帯から、比較的空いている5GHz帯の無線LANへ移行することをお勧めします。なお、すでにお使いのアクセスポイント(親機)に5GHz帯の無線LANの機能がある場合は、それを試してみてください(SSIDに xxx5Gとか、5とか5Gが付いていることが多い)。

 また、2.4GHzの場合は、無線LAN以外の電波を使う機器との干渉によるトラブルもよくあります。↓のスライドを参考にしてください。

無線LANのトラブル対策

家庭内では電子レンジの使用に注意

2.4GHz帯の場合、 特に、家庭内では電子レンジの使用に注意が必要です。電子レンジを使用すると、中から2.4GHz帯の 電波が洩れます。そのため、その漏れた電波が同じ 2.4GHz帯の電波を使う、無線LANに大きな影響を与えます。そのため、速度の低下や、切れるなどのトラブルが発生しやすくなります。

↓は、電子レンジから漏れる2.4GHz帯の電波を、簡易測定器で調べた例です。


電子レンジから漏れる2.4GHz帯の電波を、簡易測定器で調べる(電子レンジ使用前)

電子レンジ動作中  多くの電波が出ている。(上の波は、電波のピーク値)

有線LANが安定

 無線LANは、目には見えない電波を扱うだけに、電波の混雑や干渉がわかりにくく、それが原因となるトラブルも多く発生します。ビジネスで使う場合や、大事な在宅学習の場合は、無線LANよりも安定している有線LAN(イーサネットLAN)の使用をお勧めします。最近では、1Gbpsの速度を持つ1000BASE-T対応のスイッチングハブ(L2スイッチ)でも、数千円の機種もありますので、それらを活用して、有線LANで家庭内のネットワーク環境を構築すると、安くて、確実な対策が取ることができます。

有線LAN(イーサネットLAN)を活用しよう

なお、LANの口(RJ45コネクタ)を内蔵していないスマホやタブレット端末などの場合は、別途、有線LANのアダプター等が必要です。

家庭内での帯域の取り合いも原因に

 また、家庭内でも、在宅ワークや在宅学習と同時に高精細のオンラインの動画サービスを閲覧すると、その影響により帯域不足になり、影響が出る場合もあります。また、最近では、ネットゲームでも、ダウンロードなどで大きな帯域を使う場合もあります。これらの場合には、家族のだれかが 在宅ワークや在宅学習中の間は、家族内で調整を行うなどの運用の工夫が有効効果かと思います。

在宅ワーク、学習のトラブルには、これ以外の家庭内のネットワーク環境の問題やシステム(パソコンや端末)の問題もありますが、ここでは、トラブルの原因になりやすい無線LANを中心に解説を行いました。

なお、個別のセミナー等の開催も承っておりますので、問い合わせフォームよりお問い合わせ頂けましたら、幸いでございます。