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追伸 (ネットワークオーディオ)なぜ、普通のカテゴリ5EのLANケーブルを推奨しているのか?

記事を公開後、いろいろな意見を頂きました。その中には、「オーディオ的には、はやり、カテゴリ7などのシールドケーブルを使うべきだ」とのご意見もありました。その中には、アナログ領域の話と、デジタル領域を混同されている方や、TCP/IPのデータ伝送とUDP/IPのデータ伝送を混同されている方もおられました。

例えば、「LANケーブル中でのノイズ等により、1と0のビットが化けると、デジタル伝送であっても、ノイズになるはずだ。だから、ノイズに強いSTP(シールド付のLANケーブル)を使用するべきだ」との、意見もありました。たしかに、UDP/IPで伝送するVoIP(IP電話)では、イーサネットLAN(OSIのレイヤ1及びレイヤ2)のレベルでビットエラーが発生すると、LANのフレーム(パケット)そのものがFCSチェックにてエラーとなり、NICで捨てられ、1フレーム分のロスが発生し、ノイズまたは、無音になる場合があります。しかし、これは、IP電話やTV会議システムなどの音声デジタル伝送の話であって、通常のPCオーディオでは、DLNA(Digital Living Network Alliance)を使っており、音楽データの再生にはTCP/IPを使っている実装がほとんどだと思います。TCP(OSIのレイヤ4)は、伝送エラーが発生すると、自動的に再送し、ビットパーフェクトなデータ伝送を行ないます。これは、LAN(レイヤ1,2)やIP(レイヤ3)において、エラーが発生しても、自動的にエラーを修正することを意味します。また、受信したデータは、バッファメモリに蓄えられ、圧縮していないWAVデータの場合は、使用している音声符号化方式(コーディング)のサンプリング周波数に合致する一定周期で、データを呼び出し、DA変換されます。バッファに溜まっているデータを読み込みますので、多少のLAN(レイヤ1,2)やIP(レイヤ3)においてエラーが発生しても、すぐさまノイズや無音などの不具合はでないはずです。但し、TCPでのエラー訂正が間に合わないほど、LANやIPでの伝送にエラーが連発すると、データ伝送が間に合わずバッファのデータが枯渇してしまい、その結果不具合が出る場合があります。(特に2.4GHz帯の無線LANの場合、電波が混雑しやすいので、この現象が発生しやすいです。)言い換えると、バッファのデータが枯渇せずに、バッファに一定量以上のデータ溜まっている場合、データを読み込みが安定し、定周期でDA変換できます。そのため、デジタル領域では、ビットパーフェクトな伝送になり、ノイズ等の発生は無いと考えます。

STPの問題点
有線のLANの場合、シールド無しの普通のLANケーブル(UTP)を使うと、パルストランスにより、絶縁しますので、ノイズの伝搬はすくないものと考えられます。しかし、シールド付のSTPを使うと、シールド線を介して、ルータ、L2スイッチ、NAS等などのネットワーク機器のGNDと、ネットワークオーディオプレーヤーのGNDが繋がることになり、ネットワーク機器のノイズを、オーディオプレーヤー側で拾ってしまい、アナログ領域で影響が出る可能性があります。STPケーブルは、両端でGNDを取って、はじめて有効なシールド効果を発揮しますが、片端だけGNDを取り、もう一方はGNDを取らない場合、アンテナの働きをすることがあり、シールドラインから、外来ノイズを拾う可能性があります。注意して頂きたいのは、現在市販されている家庭用のブロードバンドルータや無線ルータは、ほとんどがSTPに未対応である点です。これは、雷害時に、ルータからPCや他の機器への影響を下げるためだと、思います。なお、STP対応、未対応は、ルータのLANの口の周りが、樹脂ならSTP未対応、LANの口が金属ならSTP対応です。) STP未対応のルータに、ネットワークオーディオプレーヤーからSTPケーブルで接続すると、前述したように、正しいGND接続とならず、ノイズをもらう可能性あります。また、ルータが無線LANのアクセスポイント機能を持つ場合、無線の回路からのノイズを、STPケーブルが拾うことなり、それが、ネットワークオーディオプレーヤーに回り込み、アナログ領域でのノイズなる可能性が考えられます。これは、日経NETWORK誌※の実験記事でも書いた状況と、同じ状況となります。 ならば、STPケーブルとLANアイソレータの組み合わせなら!と言う意見も、耳にしますが、筆者は、LANアイソレータを使ったことがありませんので、何とも言えません。もしかすると、ノイズが減るのかもしれませんが、私には、わかりません。

以前にも書きましたが、ネットワークオーディオでトラブルが出ている方は 高価なLANアイソレータや高価なケーブルを使う前に、すべてのLANケーブルを普通のシールド無しのLANケーブルに変えて、またルータとネットワークオーディオプレーヤーの間に100BASE-TX対応の普通のL2スイッチ(スイッチイングHUB)を入れて、ネットワーク機器として正しい状態に戻してみることをお勧めします。(もちろんIPの設定は正しい状態で)
オーディオとしての、チューニングは、その後のお楽しみとして。

※日経ネットワーク 2013年8月号 試せば理解が進む ネットワークなんでも実験室 ネットワークオーディオに雑音が混じる原因を突き止めろhttp://ec.nikkeibp.co.jp/item/backno/NN0160.html

概要:カテゴリ7のSTPケーブルをJJコネクタ(延長用コネクタ)でシールド無しのLANケーブルとつないで、不適切なSTPケーブルの使い方を行うと、無線LAN機器のノイズを拾って、アナログ領域でのノイズが音として聞こえる発生することを、実験で確かめた。
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